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当事務所HPに掲載させて頂いております「布田のマンション改修工事」について、改修前の写真もあった方がわかりやすいのではとお施主様からご親切なアドバイスを頂きました。
築40年弱のマンションをすでに不動産業者さんが一通り改修して販売された物件の再改修のご依頼でしたので、改修前も新品同様ですが、お施主様仕様にカスタマイズされる様子がお分かり頂けるかと思います。
玄関・寝室・LDKの順に3回に分けてのご紹介となりまして、第1回は玄関です。
玄関はマンションの場合、特に古いマンションでは小さくて収納が少ない傾向にあります。改修前の状態では、90cm四方程の土間に奥行35cm程の靴箱があるだけでしたが、廊下を一部つぶして周辺の部屋の壁位置を調整し、靴箱を廊下側面へ移動することによって、約1.5m四方の玄関土間と登山がご趣味の旦那様のためのアウトドア収納を玄関土間脇に設置しました。
また、廊下床のフローリングは無垢材として、廊下突き当りのドアはカントリー調の輸入ドアへ変更の上、特注色で塗装しています。改修前は新品であっても無味乾燥な印象でしたが、改修後は質感のある暖かい個性的な玄関になったのではと思います。
階段の大きさは建築基準法で最低寸法が決められているので、施主のご希望で「もっと小さくしたい」・「ハシゴで良い」というわけにはいきません。特に狭小敷地では、3階建て以上の計画が多く、各階で階段の占める面積の割合は意外に大きいものです。
部屋を広く見せるためには、階段と隣りの部屋を視覚的・空間的に連続させて、「透ける階段」とすることが効果的です。例えば、当事務所設計の「西宮の家(三角狭小敷地の家)」では、鉄骨階段を大型ガラスで仕切って、隣りのダイニングと視覚的に連続させています。また、「佃の家」ではRC(鉄筋コンクリート)階段を木製の縦格子(たてごうし)で仕切って、視覚的・空間的にリビングダイニングと連続させています。
空調計画の観点からは、「西宮の家(三角狭小敷地の家)」の場合、階段とダイニングをガラスと扉で仕切っているので、ダイニングの冷暖気が階段へ逃げることはありません。一方、「佃の家」ではリビングダイニングの冷暖気が階段へ流れるので、個室以外の全館空調のようになりますが、非常にコンパクトな家であることを前提に、リビングダイニングのエアコン能力に余裕を持たせて、階段室上部に暖気を逃がす通気窓を設けることでの対応としています。
猛暑や大雨などの世界規模での異常気象を考えると、CO2等の温室効果ガスの削減は急務です。日本のようにエネルギー自給率が低い国では、特に「省エネルギー」が求められます。
建物の設計をする際に「省エネルギー」とするためには、日本古来の建物に見られるような「庇や通気・日照」を考慮した、いわゆる「パッシブ・デザイン」とすることを心掛けていますが、近年の猛暑は「パッシブ・デザイン」だけでは対応できない厳しさとなっています。
パッシブ・デザインの事例
BLOG:光と風
BLOG:採光シミュレーション
従来の「パッシブ・デザイン」に加えて、屋根・壁・窓の断熱性能を高めた上で、太陽光発電での「創エネルギー」も加えた「ZEH(ゼッチ:ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス」とすることが望ましいですが、補助金を差し引いても建設費が大きく上昇するために、当事務所では残念ながら見送られることが多いのが実情です。
「創エネルギー」については、電気自動車の普及を背景に、冒頭図のように太陽光発電・蓄電池・電気自動車を一括で制御するシステム:トライブリッドが理想だと思います。太陽光発電から車への充電、車から家庭の電力/蓄電池への最適な電力供給(V2H/V2L)も可能なので、今後はトライブリッドが一般化するのではないでしょうか?
現状では、ZEHやトライブリッドは、デザインよりも性能重視のお施主様がハウスメーカーや工務店で建てられることが多いですが、一般化すれば設計事務所でも提案・実現させて頂く機会が増えるのではと期待しております。
特に、ZEH補助金は、登録工事会社・設計事務所しか申請出来ませんが、当事務所は登録設計事務所(ZEHプランナー)ですので、ZEHをご検討されている場合は是非お声掛け下さい。
また、ZEHやトライブリッドでなくても、新築時は太陽光発電と最低限の蓄電池のみとして、後から蓄電池を増設したり、車への充電器(V2Hスタンド)を追加する計画も可能ですので、お気軽にご相談頂ければと思います。
地球温暖化のためか、日本の夏はますます暑くなっているようです。最近は室内でも熱中症になることが珍しくありません。夏場は工事も大変で、工事現場へ行くと、大工さんはじめ職人さんが汗だくで頑張って仕事をされています。
添付の写真は、当事務所で設計させて頂いて建設中の住宅の屋根ですが、フラット35を申請されたため、2025年に義務化される省エネ基準を先取りして、従来よりも性能の高い断熱材が使用されました。熱抵抗値(熱の伝わりにくさ)で比べると、従来の2倍くらい断熱性能が良くなっているので、夏の炎天下の現場でも暑さの違いがはっきりとわかります!
もちろん断熱材の値段も大きく違いますが、屋根と窓の断熱はとりわけ重要なので、投資価値があるのではないでしょうか??
ここ数年は施設設計に携わることが多かったのですが、最近は戸建て住宅の設計のご相談が多く、外資系トップライトメーカーで長年日本でも住宅向けトップライトを販売されている日本ベルックスさんが当事務所に来られました。「西宮の家」の設計については、前回ブログまでで一通りお話させて頂いたつもりでしたが、ベルックスさんのトップライトを階段室に設置していましたので、追加で取り上げさせて頂きます。
都心部では一般に採光が難しく、トップライトは狭小地でも採光を確保する有効な手段です。トップライトは和製英語で、英語ではスカイライト(Skylight)ですが、トップライトを通してSky(空)を見る設置の方法と、Sky(空)は見えなくてもLight(光)を感じる方法に大別できると思います。Light(光)だけを感じる方がよりドラマチックな空間となることが多く、いわゆる「ライトウェル(Light Well 光の井戸)」が演出できます。
冒頭写真のように、「西宮の家」では階段室3階屋根のトップライトから降り注ぐ光が2階ダイニングの大型ガラス越しに見えて、階段室がライトウェル(光の井戸)となる計画です。大きなトップライトから青いSky(空)を眺めるのも気持ちいいですが、光がどのように見えるかも考えて設計したいと思っています。