一級建築士事務所 エイチ・アーキテクツ

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コンクリート造ですか?…いえ、木造です

「西宮の家」の設計 ③

 住宅を設計する際に、お施主様と一緒に様々な検討をします。「西宮の家」を題材に、実際にどのような提案をさせて頂いているかをご紹介するシリーズの第3回です。

 前回のブログで、「西宮の家」では駅からの往来が多い南側道路から玄関ドアが見えないように「コンクリートの目隠し壁」を設置したことを書かせて頂きました。

 敷地いっぱいに建物を建てる時は、玄関と道路の間に十分な距離がとれないので、玄関のプライバシーをどのように確保するかが問題となります。

 「西宮の家」の場合は、最寄り駅が西側で、東側は公園と川で人の往来がほとんど無かったので、玄関の西側に衝立(ついたて)のような目隠し壁を設置しました。また、目隠し壁は重厚感のある「打ち放しコンクリート」として、玄関庇は屋外通路の庇と一体化した「大きな庇」とすることにより、風格のある玄関となるように演出しています。

 1階の木造の外壁は濃灰色の鋼板で覆われて、このコンクリートの壁だけが露出しているので、「コンクリート造ですか?」と聞かれることがあります。実は、計画当初は1階はすべてコンクリート造で検討していましたが、コスト調整の結果、このコンクリートの壁以外は木造となりました。

→ 西宮の家

光と風

 「光と風」を如何にとり入れるかは、建物を設計をする上で重要なことだと思います。最近はコロナ禍で換気が特に注目されていますが、換気とはまさに風をとり入れることです。

 では、やみくもに窓を増やせば良いのでしょうか? 例えば一面ガラス張りの建物の室内は明るすぎて不快なことがあります。また、夏も冬も窓を通して大きな熱の出入りがあるので、窓が多いと冷暖房が効率的に使えません。窓は多ければ良いわけではなく、適所に必要なかたちで配置するべきです。

 冒頭の画像は、当事務所で設計した「千成幼稚園」の南北断面図です。北側の里山から吹きおろす南北方向の風が、高窓と吹抜けのある中廊下をはさんで建物の中をめぐるように設計されています。また、南側の1階保育室の大きな窓では、軒の深い「大きな庇」が夏の強い日差の進入を防いで、冬の暖かな光をとり入れます。中廊下の高窓からの光は、中廊下とともに北側の保育室も明るく照らします。すべての窓は、それぞれの役割を期待して配置されているのです。

→ 千成幼稚園建替え新築工事

→ 「千成幼稚園」BIMモデル動画

 もちろん、法規上必要な窓もあります。窓からの景色や建物の美観上の理由での窓配置もあります。設計打合せを通じて、様々な面から丁寧に検討した上で、最適な窓の計画をご提案できればと思います。

PROCESS(ご提案の流れ)

大きな庇

千成幼稚園 南側の大きな庇

 暑い日が続いていますが、皆様は体調を崩されていないでしょうか?東京の一年の猛暑日(最高気温が35℃以上の日)日数が今日にも記録更新ということで、今年は特別暑いようです。世界的にも北半球は各地で猛暑ということで、地球温暖化により来年以降もこの傾向が続くのでしょうか?

 東京都では大手住宅メーカーの太陽光パネル設置が来年度にも義務化されることとなりました。サッシ窓メーカーでは、二重ガラスから三重ガラスの標準化へ移行する動きもあります。「環境への配慮」は主要なテーマであるとは思いますが、建物がますます性能を追求して重装備になっていくのが良いのかについては疑問があります。

 冒頭の写真は当事務所で設計した「千成幼稚園」の南側保育室前の様子です。木造2階建ての園舎ですが、構造の工夫によって、奥行2mを超える柱の無い庇を実現しました。暑い日は「大きな庇」の下で、子ども達が走り回って遊んでいます。幼稚園の玄関や向かいの子育て支援・地域交流施設の入口にも「大きな庇」があって、子どもや地域の人達が集まる気持ちの良い場所になっています。

→ 千成幼稚園幼稚園 建替え新築工事

→ 「千成幼稚園」BIMモデル動画

 奈良や京都の寺社仏閣を巡って、縁側に座って庭を眺めると涼しい気分になります。普段の設計においても、日本に昔からある軒の深い庇や、光と風の取り入れ方など機械設備に頼らない避暑の方法も大切にしたいと思っています。